Japanese
English
今月の主題 胃の腺腫─診断と治療方針
序説
胃腺腫とは
Introduction
岩下 明德
1
Akinori Iwashita
1
1福岡大学筑紫病院病理部
キーワード:
胃腺腫
Keyword:
胃腺腫
pp.1803-1805
発行日 2014年12月25日
Published Date 2014/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403200102
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胃腺腫の本態と歴史的名称
胃腺腫は上皮性の良性腫瘍と定義され,組織学的に腸型と胃型腺腫に分類されている.さらに前者を扁平腺腫(小腸型)と大腸型腺腫に,後者を腺窩上皮型と幽門腺型に亜分類する人もいる.しかし,この本態が明らかになるには多くの先達の血のにじむような努力を必要としたのは言うまでもない.
今日の腸型腺腫に相当する胃病変を本邦で最初に報告したのは山極(1905年)で,外国ではKonjetzny(1928年)と言われている.しかし,本邦において胃腺腫の組織像や本態,名称が多く議論されはじめたのは1960年代からである.1962年に松本ら1)は剖検例の胃にみられた異型性増殖による平盤状隆起を報告し,同時期に中村(卓)ら2)が同様の病変をIII型ポリープ(扁平腺腫)と分類し,同時にIV型ポリープ(大腸型腺腫)を提唱した.また同様の病変に対し1966年にはNakamuraら3)が異型上皮巣(ATP),1967年に福地ら4)がIIa-subtype,そして1968年に佐野ら5)が扁平ポリープ,長与が境界領域病変などと呼称し,臨床的,病理学的特徴を詳細に検討し報告した.熱心な研究者らが症例数の積み重ねと詳細な検討を行っていたこの時代に,それらの組織像は,良性と悪性のいずれとも診断しがたい境界領域の病変や,癌とは言えない異型組織などと認識されていた.すなわち,腺腫のほかに非腫瘍性の幼若上皮や低異型度の癌が含まれている可能性があった.
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