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書評「大腸内視鏡治療」
安富 正幸
1
1近畿大学第1外科
pp.662
発行日 2001年4月25日
Published Date 2001/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103211
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工藤進英氏による「大腸内視鏡治療」が上梓された.今日では大腸内視鏡は単なる検査手段ではなく,重要な治療手段である.本書は「早期大腸癌」,「大腸内視鏡挿入法」とともに工藤氏の三部作である.その中でも本書は治療に主眼を置いているが,治療の裏付けとなる正確な診断が十分に盛り込まれている.工藤氏は1993年,「早期大腸癌」を出版し,当時は“幻の癌”であった平坦・陥凹型の癌が存在することを証明され,更に摘出標本の実体顕微鏡的観察から,腫瘍の組織型や癌深達度とpit patternが深く関係することを証明された.この研究は拡大電子内視鏡の開発に進み,今日の拡大電子内視鏡診断による病変の質的・量的な診断が可能になったのである.
わが国においては,癌を始めとする大腸疾病の増加が大きな社会問題となっており,近い将来に大腸癌が癌死亡の第1位になるであろうと予想されている.大腸癌に対する検診の重要性,特に内視鏡検査による精密検査の必要性が叫ばれている.内視鏡技術の向上と内視鏡医の増員こそは現在の日本にとって最大の急務であると言っても過言ではない.
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