消化管病理基礎講座
腫瘍の組織所見に関する用語(2)
池上 雅博
pp.87-92
発行日 2001年1月25日
Published Date 2001/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103136
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再生異型
潰瘍辺縁,各種の炎症性腸疾患の修復の際に出現してくる再生粘膜を構成する腺管にみられる異型.Fig.1に1例を示す.典型的な再生粘膜は写真に示すように,毛細血管の増生と炎症性細胞浸潤を伴う幅広い間質を有する房状の形態を示す(Fig.1a)1).核の大きさは組織修復の時期あるいは炎症の程度などによって異なるが,最盛期には腫大が目立ち,核小体も顕著である.癌細胞との相違は,腺管全体的には,細胞に表層分化(後述)が保たれており,細胞質の分化も保たれている(細胞質内に粘液が豊富で明るい)(Fig.1b).また,核の腫大が目立つものの核縁は滑らかで多くは円形~類円形であり,核クロマチンの増加はなく,どちらかと言うと核は淡明で明るい.大きい核小体がみられるが1~2個である(Fig.1c).以上のような特徴が再生粘膜にみられる.典型的な場合には,癌との鑑別は容易であるが,生検で一部分の所見しか得られない場合や生検に伴う挫滅性変化で細胞質・核に変性が加わっているような場合には,癌との鑑別に苦慮することもある.そういった場合,筆者の経験では連続切片を作製し情報量を増やすことを推奨したい.連続切片作製により,癌病変では癌としての異型が現れてくることが多く,診断に迷った場合には有効な方法である.
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