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書評「肝癌の低侵襲治療」
打田 日出夫
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1奈良県立医科大学附属病院・放射線医学
pp.888
発行日 1999年6月25日
Published Date 1999/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103084
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日常診療に不可欠である肝癌の低侵襲治療を包括した単行本は皆無であったが,中村仁信教授と林紀夫教授のチームにより,最新の知識と考え方を豊富に取り入れた平易で簡潔な成書を発刊されたことは,医療における大きな福音である.
低侵襲治療の考え方,肝癌のスクリーニングの確定診断の項では,必要な事項が要領よくまとめられている.また,治療法の選択基準では,TAE,PEIT,併用療法,マイクロ波凝固,動注リザーバーと多岐にわたる低侵襲治療の選択について,腫瘍結節の大きさ(3cm以上と以下)と性状(塊状型と浸潤型)に分けて,形態と機能の両面から整理して解説されている.低侵襲治療のテクニックの項では,TAE,CTを含むPEITなどの実際をわかりやすく解説してあり,カテーテルの使用法,TAEにおける血管造影,TAEの方法,リザーバー動注化学療法などでは,分担執筆者の個性と流儀が感じられ,興味深く読んだ.治療後のマネージメント,特に再発の診断と再治療は肝癌の治療における忘れてはならない課題であるが,重要なポイントが記述されている.また,合併症についても便宜的に内科的と放射線科的対応に分けて整理されており,最後に患者への日常生活指導にも言及している.治療のみに終始しないで患者を全人的なQOLの観点から診ることの重要性を示唆しており,教示されるところが大きい.
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