胃と腸 図譜
非特異性多発性小腸潰瘍症
松本 主之
1
1九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
pp.1714-1717
発行日 2011年10月25日
Published Date 2011/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102392
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1概念,病態
非特異性多発性小腸潰瘍症の特徴は,(1) 原因や誘因が明らかでなく,(2) 持続的な潜出血による貧血と低蛋白血症を来し,(3) 粘膜下層までにとどまる治癒傾向のない多発性小腸潰瘍で,(4) 特異的な組織所見に欠如すること,に要約される1)2).九州大学病態機能内科学および関連施設における過去40年間の確診例は17例にすぎず,まれな疾患である.ただし,国外でも類似した病態の報告が散見される3)4).原因は全く不明であるが,常染色体劣性遺伝形式の家系があり,遺伝的素因の関与が考えられる.
女性に好発し,若年時から原因不明の鉄欠乏性貧血として経過観察され,青・壮年期に本症と診断される.診断契機は易疲労感や全身倦怠感などの貧血症状と低蛋白血症に伴う浮腫である.検査成績では,高度の鉄欠乏性貧血と低蛋白血症を認め,便潜血は持続的に陽性を示す.炎症所見は陰性,あるいは軽度上昇にとどまる.
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