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近年,高齢者の増加,薬剤の多用などにより,原因不明消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding ; OGIB)を呈する患者数は増加している.一方,カプセル内視鏡(video capsule endoscopy ; VCE)およびバルーン小腸内視鏡(balloon enteroscopy ; BE)の開発・普及により,小腸内視鏡診断は目覚しい進歩を遂げ,OGIBにおいて主要な位置を占める出血性小腸疾患に対する診断・治療も可能となった.これら現状を踏まえて,小腸出血性疾患の原因疾患,VCE,BE,造影検査やCTなどそのほかのmodalityの使い分けと位置づけ,さらに,これらの最新の診断機器を用いた場合の出血源診断能など,OGIB診断・治療の現状と問題点を明らかにする目的で本号が企画された
まず,序説で松井がOGIBが増加している現状と,近年の検査法の進歩,問題点について概説した.岡論文ではOGIBに対する診断・治療の進め方について述べられた.特にVCE,BEなどの新しい診断機器と,従来の小腸造影検査,腹部US,CT,血管造影検査などの効率的な診断法の組み合わせと,内視鏡的止血手技について提示された.次に,出血性小腸疾患に対する診断手技として,中村論文ではVCEの適応と禁忌,具体的検査法と効率のよい読影法が解説された.工藤論文ではsingle BEの工夫として,炭酸ガスを用いて深部挿入が可能となり患者負担が軽減すること,今後のNBI(narrow band imaging),拡大機能の搭載などについて解説された.松田論文ではOGIBに対する844件のdouble BEの診断・治療成績について疾患ごとの成績が示され,OGIBの診断・治療におけるBEの重要性が強調された.蔵原論文では出血性小腸疾患診断における小腸X線造影検査の位置づけと有用性について解説され,特に壁外発育型GIST(gastrointestinal stromal tumor)の診断において小腸X線造影検査の有用性が報告された.
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