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大腸鋸歯状病変が注目を浴びてきたのは,ここ十数年のことである.中でも,SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)はMSI(microsatellite instability)陽性大腸癌の前駆病変として臨床的にはその存在診断,質的診断から治療の是非までが論議され,病理・遺伝子学的には遺伝子解析結果をもとにした組織診断基準に収束する傾向も認められているものの,まだまだ完全に一般化しているとは言い難い.また,本邦の大腸腫瘍の取り扱いの指針である「大腸癌取扱い規約」(第9版,2018年発刊)では,SSA/Pは現在も“腫瘍”には分類されておらず,“腫瘍様病変”の項目に置かれていることは早急に訂正すべきである.
ところで,SSA/Pの起源が過形成性ポリープと示唆されている背景や,SSA/Pと過形成性ポリープの鑑別が困難になってきたことを理由に,2019年にWHOより大腸鋸歯状病変に対する病理診断基準が新たに提唱され,SSA/Pの名称がSSL(sessile serrated lesion)に変更された.さらに,過形成性ポリープのうち拡張腺管が1つでもあればSSLとすると定義が変更された.一方,本邦では,大腸癌研究会プロジェクト研究においてSSA/Pの病理診断基準が検討され,2011年以降,本邦独自の病理診断基準が大腸癌取扱い規約に記載されている.本基準は,①陰窩の拡張,②陰窩の不規則分岐,③陰窩底部の水平方向への変形(逆T字,L字型腺管の出現)の3項目のうち2項目以上を病変の10%以上の領域に認めるものをSSA/Pと診断するというものである.本邦の多くの病理医は,大腸癌取扱い規約に従って病理診断していると推察される.最近SSLという用語を使用している内視鏡医も多いが,自施設の症例がどのような基準で病理診断されたのかを理解しているのであろうか? ぜひ,一度確認していただきたい.
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