Coffee Break
大腸学事始め―(13)日本の大腸学―その3
武藤 徹一郎
1
1癌研有明病院
pp.1276
発行日 2007年7月25日
Published Date 2007/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101160
- 有料閲覧
- 文献概要
大腸学の進歩は大腸癌だけにはとどまらない.炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease;IBD)の進歩も忘れてはならないことの1つである.
1970年,私がロンドンに向けて飛び立ったころは,わが国にはIBDの専門家としては弘前大学の松永藤雄教授と東北大学の山形敞一教授が存在するくらいであった.今では消化器の専門家なら誰でも知っている潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)やCrohn病(Crohn's disease;CD)なぞは講義で聴いたこともなければ診たこともなかった.1973年に当時の厚生省の難病対策政策の支援のもとに特定疾患難治性腸管障害調査研究班(難病班)が発足し,わが国における実質的なIBD研究がスタートすることになる.初代班長は土屋周二先生で,私は土屋先生の中学から第一外科に至るまでの後輩ということもあって,最初からこの班の一員に加えていただく光栄に浴した.臨床医も病理医もIBDの経験がほとんどないか,あってもわずかという背景しかないため,班会議と言ってもほとんど勉強会に近いものであった.厚労省は初めから班員あるいは班友の選定に際して,全国的な分布を考え,できれば全県から少なくとも1か所を指定することを強く要望していたが,これは結果的には正しい判断だったことが後に明らかになった.なぜなら,その後増加し続けるIBDの診断と治療が,全国ほぼ均等に行いうるようになったのは,この班会議の大きな成果と考えられるからである.おそらく,数ある難病班の中でIBD班は最も実質的に大きな成果を挙げていると思われる.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.