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食道癌は同時性・異時性に多発する傾向があるだけでなく,他臓器にも悪性腫瘍を有することが少なくない.食道癌の早期発見が可能となり,食道を失うことなく内視鏡治療によって治癒し,QOLの高い長期生存が可能となった.日本国内では1999年に207例の食道癌がEMRで治療されたと登録され,それらの40か月の生存率は84.9%であった1).この症例群の死亡例14例の死因を検討すると原病死したものは1例のみであり,早期に適切な診断が下されれば食道癌は致命的とはならない時代を迎えた.しかし今度は他臓器癌がその予後に大きな影響を与える可能性が生じてきた.食道癌に合併しやすい他臓器癌(食道癌取扱い規約では食道多重癌と呼称する)としては頭頸部(なかでも下咽頭がよく知られている),胃,大腸の報告が多いが,この他にも様々な臓器に発生する.このような特性を踏まえて食道多重癌の生物学的特徴,多重癌を念頭に置いた集学的な診断と治療および治療後のサーベイランスのあり方が問題点として浮かびあがってきた.食道粘膜癌の急速な発見数の増加は本邦のこれまでの研究の成果である.幸い毎年,日本食道疾患研究会の全国集計が全国の多くの施設の協力でなされている.因みに1999年の集計1)では191施設による集計で内視鏡により治療された(EMRが主治療)食道癌に合併した他臓器重複癌はTable 1のごとく報告されている.圧倒的に胃癌が,次いで咽頭部癌が同時・異時性とも多い.また頭頸部癌でも組織型が扁平上皮癌である以上,これまで主に食道癌で検討されてきた粘膜癌が頭頸部にも存在するはずである.最近では消化器内視鏡医が頭頸部癌のEMRをも施行する傾向にある.EMRの対象となりうる食道癌をより効率よく拾い上げるには,どのような対応が必要か.他臓器癌と合併する食道癌には食道だけに発生する癌と部位,形態,年齢,性差などに何か違いがあるのか,carcinogenetic fieldの概念からもう一度食道癌を見直し,その実体を明らかにさせ,1例でも多くEMRで対応し臓器温存を図る努力が必要である.他臓器癌との兼ね合いから食道多重癌に対して診断・経過観察・治療についていかに対応すべきかが本号では言及されるであろう.
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