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八尾(恒) それでは座談会を始めたいと思います.大腸癌の発育・進展過程はまだよくわかっていない.牛尾先生や私のところの松井助教授が,X線画像の推移に基づいた立派な論文を書いていますが,内視鏡的な経過観察例にはX線のそれと異なった変化をとらえているものがあります.本号では,いろいろな先生方の既発表例を含めてとにかくなるべくたくさんの症例を見せていただいて,大腸癌の発育進展をもう一度考え直そうという意図で企画されました.結果的には46例が集まり「胃と腸」の編集委員の先生方,特に病理の先生方にはすごい時間を費やしていただいて検討していただきました.また,鶴田先生にはすごいエネルギーで集計していただきました.この座談会では集計成績にこだわらず,大腸癌の発育進展にどんな要因が働いているのか,また,集められた症例から,臨床の先生はどういうことに注意して診療すればよいのか,症例を中心に議論していただきたいと思います.最も苦労された鶴田先生からお願いします.
鶴田 八尾先生が言われたように46病変集まったのですが,今回は初回に内視鏡検査を施行された41病変に限って検討させていただきました.対象病変の初回検査時肉眼型ですけれども,41病変中27病変(66%)がI型で,IIa型が12病変(29%),IIc型が2病変(5%)で,初回にM-SM1と診断した30病変に限りますと,I型が18病変(60%),IIa型が10病変(33%),IIc型が2病変(7%)でした.PG(polypoid growth),NPG(non-polypoid growth)の臨床的定義を診断していただいた先生に一任した場合の初回検査時発育形式は全体41病変中PGが35病変(85%),NPGが6病変(15%)でした.初回にM-SM1と診断した30病変に限りますと,PGは28病変(93%),NPGが2病変(7%)でした.以上のように,今回検討した“経過を追えた症例”の多くは初回検査時I型またはIIa型のPG病変であり,M-SM1と考えられる30病変に限るとIIc型,NPGと考えられるのは2病変のみしか存在しませんでした.
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