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要旨 消化器内視鏡医の立場からすると,ESDの出現は,従来のスネアを用いたEMRと比べた場合に大きな一括標本が得られる点で画期的な出来事であった.すなわち一括切除によって,病変の全割が可能となり,深達度診断を中心とした正確な病理組織診断が可能となった.そもそもESDは,細川・小野らによって新しく開発されたITナイフを用いて,広範囲の粘膜切除に応用したものである.ESD完遂にあたっての技術的問題を克服したこと,そして後藤田らが,適応病変を臨床病理学的に報告したことは,国立がんセンターを中心としたESDグループの大きな業績の1つである.その一方でESDは技術的ハードルが決して低くなく,これまでの内視鏡治療の概念を超え,軟性鏡を用いた(内視鏡外科)手術とも考えられる.ESD対象症例は,そのほとんどが無症状あるいは検診内視鏡で拾い上げられた症例であり,いきなりの外科手術の適用の回避を希望される場合が多い.今後,ESD後のリンパ節再発症例に対して,サルベージ手術を施行して,その長期予後に問題がなければ,適応境界病変へのESDの適応は積極的になされるべきであるが,現在のところ十分なevidenceはない.一方,消化器外科医の立場からすると,ESDは局所切除の1つの手技に位置づけられ,従来から開腹手術による局所粘膜切除術(ただし胃の外側からアプローチする)や胃内手術などが報告されている.しかし今回のESDのような内腔側からの広範囲の粘膜の切除術は初めてである.早期癌が粘膜上皮から発生することを考えると,ESDは最も望ましい局所切除の方法であり,早期胃癌の新しいタイプの手術と言える.今後,センチネルリンパ節などを考慮に入れた縮小手術の展開が予測される.
From the point of view of the GI endoscopist, the development of ESD (endoscopic submucosal dissection) was epoch-making because it provides a big specimen which contributes well to precise histopathological assessment. ESD is considered as a new type of flexible endoscopic surgery. In the past, intragastric surgery in which a wide area of mucosa is dissected by laparoscopic devices was advocated in the field of surgery. However, intragastric surgery was too complicated and time-consuming, so it has now been, replaced by ESD. In the near future ESD or local resection assisted by sentinel node navigation is expected to be able to accomplish a minimally invasive treatment.
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