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はじめに
Barrett食道癌の急激な増加が欧米で問題となってきて,本邦でもトピックスの1つとなっている.Barrett食道に関する論文は年間400件以上発表されていて,その関心の深さが推察される.Barrett食道の発生,病態,malignant potential から dysplasia,腺癌の発生機序,サーベイランス,腺癌の発生予防,そして治療に至るまで,種々の検討がなされているが,十分とは言い難い.
Barrett食道はGERD(gastroesophageal reflux disease)の終末像と考えられているが,GERDの10~15%しかBarrett食道が発生してこないのはなぜなのであろうか.発生するための攻撃因子,防御因子における至適条件は何であろうか.胆汁酸の影響はどうであろうか.食道噴門腺(esophageal cardiac gland)がBarrett食道の発生にどのように関与しているのか.また,Barrett食道が噴門からcreepingするとしたらその速度はどのくらいか.Barrett食道に逆流性食道炎の合併率が低い理由は何か.Barrett食道を有する症例に胸やけの自覚症状を強く訴える症例が少ないのはなぜか.short segment Barrett's esophagus(SSBE)はすべてlong segment Barrett's esophagus(LSBE)になるのだろうか.ならないとしたらその理由は何か.Barrett食道のmalignant potentialは本当に高いのか.腺癌発生の主体はGERによるプロスタグランディンE2放出によりシクロオキシナーゼ(cox2)やプチティンキナーゼ(RKC)が誘発され増殖能を亢進すること1)でよいのか.もっと複雑な要素がからんでいるのだろうか.SSBEとLSBEのmalignant potentialに差があるのか.あるいは単に面積の問題か.不完全型腸上皮化生が腺癌の母地とされているが,癌の発生しないものもあり,どんな条件が加わる必要があるのか.LSBEにおける癌の発生部位をみると広範囲にわたっていて,意外に口側にも多い.Barrett食道がcreepingで発生するとすれば食道炎の発生からの時間経過や胃食道逆流にさらされる程度からみても当然Barrett食道の下端(肛側)に好発するはずであるが,どうしてそうでないのか.Barrett食道癌の進行癌は広範囲のリンパ節転移を来し予後不良となるがなぜなのだろう.腸上皮から発生した分化型の癌であるのになぜこれほどまでに予後不良となるのか.その他,種々不明の点が多く,エビデンスらしいエビデンスはない.今後研究すべき課題の宝庫であるとも言える.今回はBarrett食道癌の境界診断および深達度診断について検討していただくこととした.
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