Coffee Break
IIc内の“島状粘膜残存”と“聖域”―私はこう考える
高木 國夫
1
1林外科病院
pp.383-386
発行日 2004年3月25日
Published Date 2004/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403100455
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「消化管病理基礎講座(12)消化管疾患の肉眼所見に関する用語」(胃と腸 36巻10号:1303-1306,2001)の「島状粘膜残存」の項目で,IIc内の島状粘膜に関連して“聖域”が解説されていないのは,理解に苦しむものである.
IIc内で,多くは中心部に非癌粘膜が存在するのはどうしてか,1950年代には不明だった.私も1959年,早期胃癌の病理を検討した際に,潰瘍を伴った症例で潰瘍辺縁に再生粘膜を80.6%(29/36)に認めていた1)が,この再生粘膜が潰瘍の瘢痕化により,島状再生粘膜―すなわち“聖域”になることは,当時,悪性サイクルの考えがまだ検討されていなかった時期で,理解できなかった.胃潰瘍の良性サイクルに準じて,IIc内の胃潰瘍の再燃,瘢痕が悪性サイクルとして臨床的に検討されはじめた時期に,村上忠重先生が1966年「潰瘍瘢痕癌中心部に存在する非癌性再生腺腔について」2)を報告し,IIc内の非癌粘膜が胃潰瘍瘢痕部の再生粘膜によるものであって,当時,ベトナム戦争でアメリカ空軍による北爆で,首都ハノイが聖域として爆撃を免れていたことに関連して“聖域”と名付けられた.村上先生のご指摘とユニークな命名に深く感銘を受けた思い出がある3).
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