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2003年11月の早期胃癌研究会は,11月19日(水)に一ツ橋ホールで開催された.司会は渕上忠彦(松山赤十字病院消化器科)と細川治(福井県立病院外)が担当した.ミニレクチャーは松田圭二(帝京大学外科)が「腹腔鏡下大腸手術の実際」と題して行った.
〔第1例〕 35歳,女性.腸管子宮内膜症(症例提供:福井県済生会病院外科 宗本義則).
主訴は便秘,便潜血陽性.清水(大阪鉄道病院消化器内科)が内視鏡を読影した.S状結腸に発赤の強い頭部が分様した隆起性病変があり,基部ははれぼったいが健常粘膜で覆われている.境界明瞭であるが,発赤し粘液の分泌があり,炎症性の隆起または部位から見て粘膜面に露出した子宮内膜症が鑑別に挙がる.X線(Fig. 1)も清水が読影した.一側変形の限局した病変で炎症は考えられない.表面の結節状隆起は炎症であっても良いがひきつれがあり柔らかい病変で,通常の粘膜下腫瘍また癌を含めた上皮性腫瘍は考え難い.転移性腫瘍にしては収束像がない.内視鏡と同様に子宮内膜症しか鑑別に浮かばない.多田(多田消化器クリニック)は虫垂炎,卵巣を含めた他臓器からの炎症の波及も考慮すべきだとコメントした.出題者からCTでは周辺臓器に異常所見なし.狭窄症状強いため手術した.
病理は海崎(福井県立病院病理)が説明した.ひきつれを伴う柔らかいSMT(submucosal tumor)様隆起で頂部に結節状隆起の集簇がある.割面ではSMT様隆起の下の部分は粘膜下層から漿膜下層には線維の増生を伴う白色調の変化があり,正常の上皮が頂部近くまで覆い頂部は赤色調でびらん化している.ポリープ状隆起の表面はびらん化し肉芽組織を伴っている.組織学的に子宮内膜症と診断した.生検では非特異的炎症と診断していたが見直すと診断可能であった.鬼島(東海大学病態診断病理)は診断は同じで,粘膜内に顆粒状に大量に露出してくる症例は珍しいとコメントした.隆起表面が結節状を呈したまれな形態の腸管子宮内膜症の1例であった.
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