今月の主題 白血病—最新の知見と治療
特殊な白血病
高齢者白血病の治療
小峰 光博
1
1群馬大学医学部・第3内科
pp.626-628
発行日 1990年4月10日
Published Date 1990/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909531
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人口構成の高齢化から,単純計算しても高齢者の白血病が増加しつつあることは容易に理解できる.高齢者の定義にもよるが,成人AMLでは全体の15〜20%は60歳以上の患者で占められるであろう.高齢者では加齢に伴うさまざまな機能変化が累積しているほか,重要臓器系の合併症をすでにもっている可能性が高い.60歳以上では白血病に前駆する造血異常が認められる頻度が高かったり,化学療法の毒性が強く現れ,また白血病細胞自体の薬剤感受性が劣るなど,若年者ではみられない不利な条件があると想定されている.敗血症その他の重症感染に対する耐容力も低下しており,出血・ショックなどからの立直りも不良で脆弱であり,いかにも今日標準的となりつつある強力な化学療法には耐えないとの印象がある.現にそのような苦い経験によって積極果敢な治療意欲が削がれることが多い.実際70歳以上のAMLに対しては,温和な化学療法のみでなく,一般の支持療法も控えるとする極端な考えもないではない.これには患者層全体としての社会活動も考慮した費用-効果関係が強く意識されているのであろう.
優れた治療成績が出されている患者集団では,しばしば60歳以上の症例が除外されていたり,その比率からみてある種の選択が加わっていると考えられる.最近ではこのような高齢者に焦点を絞り,別個に成績をまとめた報告がみられる.
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