増刊号特集 泌尿器科画像診断
Ⅵ.メディカルエッセイ
患者の話をよく聞き,もっと触ってみろ!
内藤 克輔
1
1山口大学医学部泌尿器科
pp.22
発行日 1999年3月30日
Published Date 1999/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902548
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当教室の回診前には重症患者や新しく入院してきた患者のブリーフィングを行っている。3〜4年前の回診前のことである。ある研修医が転移性膀胱癌患者を受け持っており,CTを指しながら,「膀胱癌はS状結腸を巻き込み(周囲まで浸潤していることを意味しているらしい),イレウス状態です」と説明した。なるほど膀胱癌は膀胱外まで浸潤しているが,同時に供覧されたKUBをみると腸管内ガス像は多くなく,イレウスとは思えない。患者を診ればイレウスかそうでないかはわかると思って,他の教室員に対して恥をかかせないようにと研修医の意見を取り入れたように見せかけ,「外科医と早急に相談してください」といい,ブリーフィングを終わった。
いざ回診が始まり,その患者の前に立ったとき,患者は朝食を終えて比較的元気にベッド上に座っているではないか。当研修医に「イレウスなのにどうして食事が出ており,胃管が留置されてないのか?グル音は聴いた?お腹を診察した?」と尋ねると,「グル音は聴いておりません。お腹も診察しておりません。しかし,CTのレポートに"膀胱癌はS状結腸を巻き込みイレウスの状態でしょう"と書いてあります」と"シャーシャー"として答えるではないか。開いた口が塞がらないとはこのことである。画像診断のレポートだけを読み,患者を全然診察,特に触診をしない研修医が増えていることは薄々わかっていたのであるが……。部屋を出た途端"カミナリ"が落ちたことはいうまでもない。
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