特集 上手な話し方
上手な話の聞きかた
村岡 花子
1
1ユネスコ国内委員会
pp.72-73
発行日 1957年5月10日
Published Date 1957/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201410
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一般に話し方,話術という場合は話すことばかり考える.いかに上手に話すかという行為を主として考えるが,話し方という中には,聞き方も含まれるのである.私が誰かと話をしている場合,上手に話す事を考える.が,話す為には上手に聞かねばならない.まず聞こうと心がけねば駄目だと思う.聞かない為に話せないという事がよくある.黙つて聞くという事はなかなかむずかしい事である.
講演の場合,話し易い聴衆にぶつかる時と話しずらい聴衆にぶつかる時もある.勿論講演する側の話の内容にもよるが,話す人が相当な材料を持つていて,面白い話が出来そうな場合でも,聴衆が悪いために面白くなくなる事がある.聴衆は講話者から,面白い話を聞く為に,上手に聞く事を覚える必要がある.興味を持つて聞いているかどうかが,表情に表われる.「目は口程にものをいう」という言葉どおり表情が大切.それから適当に受け答えする.あまり受け答えすぎて,大げさに表情をつくり,あいつちを打ち,大業すぎると,相手の話の腰を折る結果になる.静かに,一生懸命に聞く事,技功でない共鳴と同情が自然に顔に表われてこなければならない.今の若い人達の話を聞いていると,みんなで一緒に話をしてしまつて,何を話しているか解らない事が多い.自分の言おうとする事にあせつている.こちらが注意したりするとすぐ口答えするのも,相手の話をよく聞かないからだろう.
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