巻頭言
変わっていく変わらないもの
横田 一彦
1
1東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
pp.1253
発行日 2024年12月10日
Published Date 2024/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203276
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私のふるさとは瀬戸内海に浮かぶ小さな島です.特に小学生の頃,毎年夏休みの間に過ごした島の思い出は,今でも私の心に深く刻まれています.その頃は人口3,000人ほどの町でしたが,現在は近隣の市に合併され,島自体の人口は1,200人ほどになっているそうです.昔は島へ渡るためにフェリーに乗る必要がありました.今では立派な橋が架かり,車で簡単に渡れるようになりましたが,当時はフェリーが生活の一部でした.船が進むたびに船の周りに広がる波を見るのが大好きで,その景色が島に向かう期待感をいっそう高めてくれました.
島では,祖母が小さな雑貨店を営んでおり,私は毎日海で泳ぎ,釣りをして,小遣いをもらってアイスクリームを買って食べたり,野菜や果物を畑で収穫したりして過ごしました.また,朝夕には島のあちこちでお年寄りたちが玄関前に座り込み,涼しい風を感じながら四方山話をしているのが日常の風景でした.腰が曲がってきたお年寄りの方の鎌や鍬などを乳母車に乗せて手で押し歩く姿もよく見かけました.そんな穏やかな島の生活は,私にとってまさに「ふるさと」の原風景です.
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