医道そぞろ歩き—医学史の視点から・46
ファロー四徴の手術に挑んだブレイロクとタウシッグ
二宮 陸雄
1
1二宮内科
pp.368-369
発行日 1999年2月10日
Published Date 1999/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905928
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先天性心臓疾患の手術は,今ではどこでも安全に行われている.しかし,50年近く前には心臓カテーテルさえも安全ではなかった.筆者は心臓手術に挑み始めた頃の優れた外科医たちの苦悩とそれを乗り越えた挑戦の数々を目撃した.すでに心臓手術は心臓を移植するという新しい次元に突入している.移植を待ちつつ日々死んでいく子供のために優秀な外科医たちの連帯と決断を促したい.
初めてファロー四徴の手術を考案したタウシッグが,のちに1947年に書いた『心臓の先天性奇形』の第2版(1960年)には,一人の少年の胸痛む写真が載っている.ファロー四徴などの典型的な姿勢であるsquatting(しゃがみ姿勢)である.少年は高度の肺動脈狭窄のために苦しみ,膝を胸につけた前かがみの姿勢をとり,死の影は少年の足元に迫っている.この一枚の写真を見るたびに,幼い病者が移植のために外国に行くという現状を引き起こしている非現実的な法律は速やかに改正すべきだと思う.
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