今月の主題 肝疾患Q&A
肝疾患の診断
肝細胞癌の腫瘍マーカーをどのように用いるか
武田 和久
1
,
松島 寛
2
,
大森 晶彦
2
1岡山大学医学部公衆衛生
2重井医学研究所附属病院内科
pp.475-478
発行日 1996年3月10日
Published Date 1996/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904996
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ポイント
●肝細胞癌マーカーのα-フェトプロテイン(AFP)や異常プロトロンビン(PIVKA-II)は,血清マーカーとして用いられているので,腫瘍の局在診断,すなわち画像診断の技術レベルとの兼ね合いで有用性が定まる.
●AFPは肝細胞癌の前癌病変としての慢性肝炎,肝硬変でも上昇するので,AFPが10,000ng/ml以上の進展肝細胞癌例でない限り,診断マーカーとしては用いられない.
●AFPの糖鎖異常に基づくAFP-L3およびAFP-P4の上昇例の中には,既に肝細胞癌が存在するものから,その後画像的に肝細胞癌と診断されるものまであるので,これらは肝細胞癌の予知・診断マーカーである.
●PIVKA-IIは,腫瘍径2cm以下の肝細胞癌では陽性例が少ないが,特異性が高いので,進展例の診断には有用である.
●p53遺伝子の突然変異やloss of heterozygosityの頻度は高分化型肝細胞癌では低いので,これらはむしろ肝細胞癌の進展度(脱分化度)のマーカーである.
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