医道そぞろ歩き—医学史の視点から・8
テムズ川が海に注ぎこむごとく
二宮 陸雄
1
1二宮内科
pp.2566-2567
発行日 1995年12月10日
Published Date 1995/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904306
- 有料閲覧
- 文献概要
1616年の4月17日,ロンドンのセント・バーソロミュー病院のハーヴェイは講義ノートに次のように書いています.「心臓の働きにより,血液は肺を経て大動脈に絶えず運ばれる.……心臓の搏動が永久の血液循環運動を作っているのだろうか?」.ハーヴェイが『心臓の運動について』を出版したのは,それから12年後の1628年秋のことです.
ドーヴァー海峡に近い町の町長の家に生まれたハーヴェイは,ケンブリッジから仏独両国を経て北イタリアのパドヴァ大学に留学し,3年後の1602年に学位を得ています.ミラノから汽車に2時間ほど乗り,駅を出て橋を渡ると,ジョットの聖書伝説の壁画で名高い小さな教会があります.素晴らしい壁画です.パドヴァ大学はその先の広場の一角にあります.1222年に創立された欧州最古の大学の一つで,この大学を卒業した解剖学教授ヴェサリウスは,1543年に『人体構造論』を出版し,近代解剖学の幕を切って落としました.1594年には解剖学教授のファブリキウスが自費で解剖示説の階段教室を作りました.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.