増刊号 Common Disease 200の治療戦略
運動器疾患
肩凝り症
小川 清久
1
1慶應義塾大学医学部整形外科
pp.575-577
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904212
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
疾患概念と病態
“肩凝り”は,項部から肩および肩甲間部に及ぶ範囲の圧迫感・疲労感を伴う張るような重苦しい不快な感覚である.僧帽筋やこの近辺の筋緊張増加や硬結,末梢神経(肩甲背神経,肩甲上神経など)に沿う圧痛を認めることも多い.ひどくなると,筋緊張性頭痛を合併することもある.有症率は女性が男性より圧倒的に高く,40歳代をピークとして中・青年層に高い.高齢者ではかえって低くなる傾向にあるため,加齢的現象とはいえないばかりでなく,最近では若年層に高頻度に認められるようになり,心身へのストレスが原因として多くなっていることをうかがわせる.
肩凝りが身体の他部位の“凝り”より多い理由としては,項部から肩部の筋が,重い頭部とともに上肢の土台をも支えなければならないという機能的特殊性が第1に挙げられる.第2は,これらの筋への交感神経の分布が多く,自律神経の影響を強く受けること,第3に,分業化によって前屈位で細かな手作業などの静的な筋肉作業を繰り返すことが多くなったことも与っている.すなわち,二足獣としての人間の宿命と現代病としての両側面を持つゆえに多いといえよう.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.