増刊号 Common Disease 200の治療戦略
循環器疾患
感染性心内膜炎
中村 憲司
1
1東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所循環器内科
pp.52-53
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903981
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疾患概念と病態
感染性心内膜炎(infective endocarditis:IEと略)の発症病理には基礎疾患,起炎菌,誘因などが大きく関与し,臨床像は時代とともに変貌しつつあるともいわれている.しかしながら,自己弁では緑色連鎖球菌が多く,人工弁患者ではブドウ球菌やグラム陰性桿菌が多くみられる.また,覚醒剤中毒患者では,静脈主射による黄色ブドウ球菌の多いのが特徴である.さらに,菌血症をきたす侵襲的処置もしくは検査部位に応じて,大腸菌やグラム陰性桿菌が多いのが通例である,起炎菌の培養されないものは菌培養陰性心内膜炎(culturenegative endocarditis:CNEと略)と呼ばれている.HACEK心内膜炎*のように培養技術の改良により判明した起炎菌もあるが,CNEの大部分は血液培養施行前になされた抗生剤の投与によるものが多いといわれている.
また,本症は何らかの基礎心疾患を有する例に発症することが多いが,基礎疾患の認められない例も増えつつあり,50%近くに及ぶとの報告もある.IEを起こしやすい先天性心疾患としては短絡疾患がよく知られているが,大動脈二尖弁,大動脈弁下狭窄症,肺動脈弁狭窄症などの狭窄病変も基礎疾患として重要である.そして,さらに重要なことは,これら各々の基礎疾患と心内膜炎病変ならびに発症部位との間には密接な関係がみられることである.
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