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病態生理と自然歴
感染性心内膜炎(infectious endocarditis:IE)とは,血中に侵入した細菌などの微生物が心内膜に感染巣を形成し,弁や支持組織の破壊に伴う弁逆流・心不全,重要臓器の塞栓症や感染性動脈瘤などの重篤な合併症を引き起こす疾患である.IEは100年以上も前から認知されているが,決してその頻度が減少していることはなく,その重要性はいささかも減じていない.IEの頻度は,報告によりさまざまであるが,一般に人口10万人当たり年間1~5例程度とされている.欧米ではもう少し多い傾向にあるが,麻薬常用者が多いためと推測される.男女比は1.6~2.5で男性に多く,年齢が上がるにつれて頻度が増える.抗菌薬使用が一般的でなかった時代のIE発症年齢の中間値は30~40歳台であったのが,最近は47~69歳と高齢化している.自己弁に生じたIEの55~75%は弁膜症や先天性心疾患などの基礎疾患をもつか,あるいは麻薬常用者であるが,25~45%の例ではそのような条件がなくても発症する.人工弁置換術後のIE(prosthetic valve endocarditis:PVE)はIE全体の7~25%を占め,術後1年以内の累積発症率は1.5~3%,5年以内では3~6%とされる.近年,黄色ブドウ球菌によるIEが増えており,緑色連鎖球菌によるものに迫りつつある.また,高齢化に伴って泌尿器科的処置に関連する腸球菌によるものや,消化器系悪性腫瘍と関連するStreptococcus bovisによるものも増えている.
日本循環器病学会は日本心臓病学会,日本胸部外科学会,日本小児循環器学会と共同で,2003年に「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」を作成し,公表した.基礎心疾患に応じてIEの危険度が示されており,予防も重要となる(表1).IEの診断基準として普及しているDuke臨床的診断基準(表2)では,血液培養陽性所見と心エコー図による心内膜の障害所見を確定診断の2つの柱としている.すなわち,IEを疑い確定診断に至るには,心エコー図所見が大きな鍵を握っているといえる.
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