図解・病態のメカニズム—分子レベルからみた神経疾患・2
連鎖解析による疾患遺伝子座の決定
田中 一
1
1新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野
pp.1861-1869
発行日 1995年9月10日
Published Date 1995/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903858
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ポジショナルクローニング
従来の手法では原因を同定することが困難であった遺伝性疾患において,近年ポジショナルクローニングと呼ばれる分子遺伝学的方法を駆使して多くの遺伝性疾患の病因遺伝子が解明されつつある.ポジショナルクローニングは病態機序について手がかりがなくともその疾患が単一遺伝子病であるならば,理論的に病因遺伝子を突きとめうる方法である.具体的には連鎖解析により疾患遺伝子の染色体上のおおよその位置を決定し,さらにその領域の詳細な解析をすることにより,疾患遺伝子を単離するという2つのステップからなる(図1).
生殖細胞においては,減数分裂の際,対合した相同染色体間で,ヒトでは約30回ぐらい交差(crossing-over)を起こし,相同染色体同士では同部位で切断・再結合され,組換え(recombination)(図2)を生ずる.したがって,遺伝子間の距離が遠いほど交差の起こる確率は増加し,逆に近くに存在する遺伝子同士ほど連鎖する可能性が強くなる.すなわち,この議論を裏返せば,遺伝的連鎖の程度を物理的な距離の尺度と見なすことができる.
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