今月の主題 呼吸器疾患の画像診断
Editorial
呼吸器疾患画像診断の今日
小野 容明
1
1東海大学医学部内科学II
pp.1680-1681
発行日 1995年9月10日
Published Date 1995/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903823
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胸部単純X線写真
胸部単純X線フィルムを読影する場合,胸郭,縦隔,肺野の順にチェックしていくのが通例ですが,異常陰影が限局性の病巣なのか,びまん性肺疾患なのか,で留意する点が異なるように思います.例えば前者のケースでは,①気管支血管系の区域解剖を駆使すること,②同一患者の以前の胸部写真と比較読影すること,③特に陰影が小さい場合には両斜位あるいは腹背像との比較,が診断への手がかりを与えてくれます.一方,びまん性肺疾患の場合は,①上肺野優位なのか下肺野なのか,②病変の局在様式が末梢優位なのか中枢優位なのか,③Felson,Fraserらが提唱したいわゆる肺胞性パターンなのか間質性パターンなのか,あるいはその混在なのか,といったポイントをおさえることで,鑑別しなければならない疾患がある程度想定できます.しかしここで大事なことは,X線フィルムからだけではそうした病変の特異的診断ができない点にあります.診断する医師は,その肉眼的病理の復元と患者の臨床的評価とを関連づけなくてはなりません.いうまでもなく,注意深くとられた病歴,身体的所見,検査データといった補助的な情報なしにX線写真のみから診断するようなことがあれば,それはあたかも医師に,患者と話さずに,そして触れることも許さずに診断を求めるのと同じ過ちです.
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