今月の主題 ベッドサイドの痴呆学
薬物療法のポイント—その効果と限界
痴呆に伴う精神症状の向精神薬療法
江原 嵩
1
1神戸市立西市民病院・神経科
pp.2140-2141
発行日 1990年10月10日
Published Date 1990/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900558
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痴呆とは記銘力低下を基本症状とし,感情,思考,精神活動の発動性,全人格が進行性に退行する疾患であり,その経過中には脳機能の低下の程度,すなわち痴呆の重症度と関連した精神症状が発症する(図).
その治療には脳代謝賦活剤や脳血管拡張剤が優先されるが,治療効果が乏しい症例では向精神薬が必要となる.向精神薬は脳内神経伝達や各種代謝に抑制的に作用するため,脳機能低下状態にある痴呆には好ましい治療方法ではないが,やむを得ないときもある.向精神薬療法は対症的治療であるため,向精神薬の選択は精神症状の把握にかかっている.また,向精神薬は精神症状の改善には有効であるが,知能低下には無力である.
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