Japanese
English
特集 痴呆
精神科領域における痴呆
Dementia in psychiatry
長谷川 和夫
1
Kazuo Hasegawa
1
1聖マリアンナ医大
1Department of Psychiatry, St. Marianna University School of Medicine
pp.31-41
発行日 1979年1月1日
Published Date 1979/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204353
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I.はじめに
痴呆dementiaは,もともとラテン語のdemensからきているといわれる。本来demensであつて,分裂,あるいは解体した心の意味である23)。
近代精神医学の創始期にあったEsquirol (1772〜1840)が最初にこのdémenceという用語を用いている7)。彼のいうdémenceとは,精神病の一形式であつて,思考器宮の機能をかなえるうえでも必要なエネルギーの喪失したための狂気と定義している。そして急性,慢性,老年性のサブタイプをつくり,急性の場合には治癒するが,老年性のdémenceでは治癒の可能性がないとしている。またMaudsley31)は,同じように老人性のdementiaを分けているが,急性,原発性の亜型をあげ,一過性の経過と予後の良好なことをのべている。このように近代精神医学の初期には痴呆という名称は,器質性の痴呆も,内因性と考えられるものも含めて,かなり固定的な人格の荒廃状態をさしていたように考えられる。Kraepelinが,現在,われわれが分裂病と呼ぶ精神病群を早発性痴呆dementia praecoxの名でとり出したのも,このような情況の下であつた。この分裂病の末期にみる人格荒廃の状態を分裂病性痴呆と呼ぶことは,現在でも通用してい。
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