連載 ERの片隅で・10
臨床診断学、臨床決断学
関根 一朗
1
1湘南鎌倉総合病院【湘南ER】
pp.166-167
発行日 2024年1月10日
Published Date 2024/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229389
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午後4時、日が落ちるのが早くなり、もう西の空は夕焼けの美しいグラデーションがかかっている。ER内で救急搬送を告げるアナウンスが流れた。「10分後、救急車入ります。90歳男性、体動困難。自宅内で動けなくなっているのを隣人に発見され救急要請。外傷なし、救急隊接触時発熱あり。」
ストレッチャーで小柄な高齢男性が搬入された。研修医が初期対応を終えて、救急医関根のところに診療の方針を報告しに来た。「90歳男性、39℃の高熱があり、体動困難です。発熱以外には軽い咽頭痛があるだけで、バイタルサインは安定しています。」頷きながら聴いていた関根が尋ねた。「隣人が救急車を呼んでくれたらしいね。一人暮らしかな? どんな家に住んでいるのかな?」研修医が首を傾げながら答える。「家についてはわかりませんが、おそらく独居だと思います。とりあえず、熱源精査します。」
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