特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで
扉
岸田 直樹
pp.989
発行日 2019年6月10日
Published Date 2019/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402226332
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近年,感染症界がざわついている.医療の様々な分野が日々進歩し,変化し続けているが,感染症界の変化は大きさ・スピード・性質のいずれも他の分野の比ではない.その背景としてあるのは「世界的驚異的な耐性菌拡大→耐性菌関連死の明らかな増加」だ.これを踏まえ,国内では薬剤耐性(AMR)アクションプランとして2020年度を目指した耐性菌減少目標や抗菌薬使用量削減が具体的に設定されており,皆が,何より感染症コンサルタントの筆者自身がその目標達成に向け必死だ.
このような社会背景から,①既存抗菌薬の添付文書の変化,②あまり使用されなくなった抗菌薬の市場からの撤退,③新たな抗菌薬の国内採用,といった抗菌薬の変化だけではなく,④投与期間の短縮,⑤早期内服・外来治療,⑥治療しない細菌感染症,といった“感染症治療の定説”をもゆるがす戦略の変化も大きい.また,適正使用のためにもより迅速かつ正確な診断を目指して,質量分析器,迅速PCR検査といった検査機器の開発スピードが明らかに早い.正直,感染症専門医であってもついていくのは容易いことではない.まして,感染症を専門としない医療者は,なおさらその気持ちが強いであろう.感染症は臓器横断的な分野であり,関係しない医療者はまずいないうえに,日本には気軽に相談できる臓器横断的な診療ができる感染症専門医はまだまだ少ない.そんななか,耐性菌の驚異的拡大はさらに世界的な公衆衛生学的脅威となり,よくある感染症で死ぬ時代は着実に迫りつつある.
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