特集 抗菌薬の考え方,使い方—ホントのところを聞いてみました
その他
特殊病態下の抗菌薬
松元 一明
1
1慶應義塾大学薬学部実務薬学講座
pp.1048-1051
発行日 2016年6月10日
Published Date 2016/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402224232
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Question 1
敗血症や大量出血,熱傷や心不全の患者さんの抗菌薬の用法・用量はどんなことに気を付けてどのように設定すればよいのでしょうか? ホントのところを具体的に教えてください.
全身性炎症反応症候群(SIRS)とは侵襲によって引き起こされる炎症性サイトカインによる全身性の急性炎症反応であり,感染を契機に発症するSIRSを敗血症という.臓器不全のない敗血症では,血管作動薬,輸液の投与などによって,心拍出量が増加し,それに伴い,腎血流量が増加することにより,クレアチニンクリアランス(Ccr)>130mL/分になる.この現象をaugmented renal clearance(ARC)といい,バンコマイシン1,2),メロペネム3),ピペラシリン/タゾバクタム4)において,予想以上に薬物の血中濃度が低値を示すことが報告されている.一方で,重症の敗血症患者では腎機能障害や肝機能障害を含む臓器不全が発現する.その場合は低下した腎・肝機能に基づき投与量設計を行わなければならない.したがって,敗血症の場合は,ARC発現時は投与量の増量,臓器不全の場合は投与量の減量が必要になる.
出血性ショックは,循環血液量が大量かつ持続的に喪失した病態であり,心拍出量は低下し,薬物の血中濃度は増加する.
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