書評
—山下武志 編—心房細動異文化交流—多面的アプローチのための対談集
渡邉 英一
1
1藤田保健衛生大学循環器内科
pp.1464
発行日 2015年8月10日
Published Date 2015/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402223646
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超高齢化社会が進む日本では,高齢者を意識した診療がどの分野でも避けて通れない.心房細動患者は高齢で,糖尿病,虚血性心疾患,高血圧,COPDなど,併存疾患を有することが多い.このため,他分野の医師(「異文化」と称している)と心房細動に関して相互理解を深めることによって,よりよい心房細動診療が行えるようになると考える.本書は山下武志先生と,心房細動を専門としない9名のエキスパートの先生方が,心房細動と抗凝固療法にフォーカスをあてて行った対談集であり,斬新な視点から構成されている.会話を通してホンネが聞けるのがうれしいし,私も聞いてみたかったことがズバズバ質問されているので,一気に読み終えてしまった.最近は経口抗凝固薬の処方が増えているため,消化管出血を起こして受診する症例が増えているのではないだろうか.この話題で岡本真先生(JR東京総合病院消化器内科)となされた対談で「うまい!」と思った山下先生の発言をあげる.「血栓を嫌う循環器内科医と,出血を嫌う消化器内科医,ちょうど野球でいえば,レフトとライトの関係にあり,センターのところに次々とボールが落ちていて,どちらの責任でもない.だからどのぐらいボールが転がったかわからない状況と言えますね」.
循環器医は心房細動治療のゴールを洞調律化や,(低用量の?)抗凝固療法導入と思いがちである.本書によって「異文化」との相互の理解の枠組みをつかむことにより,心房細動診療の多面的アプローチが可能になる.
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