書評
—岡田 定 著—内科医の私と患者さんの物語—血液診療のサイエンスとアート
山中 克郎
1
1福島県立医大会津医療センター・総合内科学
pp.2189
発行日 2021年12月10日
Published Date 2021/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402227955
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最近注目されている能力の1つに「ソフトスキル」がある.常識として必要であることがわかっているが,点数化することが難しいスキルのことである.コミュニケーション力やチームワーク,失敗から立ち直る力,批判的な思考,ユーモアのセンスが含まれる.経済が目まぐるしく変化する現代において,よい仕事をするためには必須のスキルといわれている.医療従事者にも必要なこれらのスキルをどう磨けばよいかを本書から学ぶことができる.長く豊富な臨床経験があり,真摯(しんし)に1人ずつの患者さんと向かい合った岡田定先生にしか書けない,患者さんと紡いだ心温まる物語だ.
この本のサブタイトルは「血液診療のサイエンスとアート」と題する患者さんの物語集である.世界中の多くの医師に敬愛されている,カナダ生まれの内科医ウィリアム・オスラー(1849〜1919)は「医療はサイエンスに基づいたアートである」という言葉を残している.医学は真理を追求する科学(サイエンス)である.しかし,それだけでは不十分なのだ.発熱した子供を優しく見守る母親のような慈しみ(アート)が必要である.
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