増刊号 診断基準とその使い方
XI.小児
18.熱性痙攣
前川 喜平
1
1東京慈恵会医科大学・小児科
pp.2332
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222108
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熱性痙攣はヒポクラテスの時代から,幼小児は発熱の際に痙攣を起こし易く,このような痙攣は予後良好であるという記載がある位良く知られた疾患であるが,定義は以外と曖味である.現在のところ,熱性痙攣とは「発熱の原因が中枢神経疾患に関係ない発熱に伴ってみられる幼小児の痙攣発作」をいう.この定義は一見,明瞭なようにみえるが必ずしもそうとは言えない.予後良好と考えられる熱性痙攣の中に,てんかんの小児が混入しており,治療上,両者を区別しなければならないのが混乱の最大の原因のようである.
発熱がみられる中枢神経疾患とは髄膜炎,脳炎,脳症,脳膿瘍などであるが,痙攣の原因として熱性痙攣以外に最も一般的なてんかんは発熱を起こさない.従って最初は両者の区別がつき難い.また脳性麻痺や小頭症などの脳障害の存在する小児は正常児と比較しててんかんになる率は高い.特発性てんかんの家族歴のある小児も,そうでないものと比較しててんかんになる率は高い.そこで両者を区別するために,痙攣の様子,持続,後遺症,年齢,神経学的所見の有無,発熱の程度,痙攣の回数並びに頻度,脳波所見などが問題となってくる.そして予後良好な熱性痙攣を単純型(良性)熱性痙攣,てんかんの危険性のあるものを複合型熱性痙攣という.
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