増刊号 診断基準とその使い方
V.内分泌
27.偽性副甲状腺機能低下症I型,II型
福本 誠二
1
1東京大学医学部・第4内科
pp.1922-1923
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221951
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■疾患概念と疫学
偽性副甲状腺機能低下症とは,副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌は保たれているにもかかわらず,標的組織のPTHへの不応性により低カルシウム血症,高リン血症などの副甲状腺機能低下状態が惹起される疾患の総称である.本症患者の約半数に,Albright's hereditary osteodystrophyと呼ばれる中手骨・中足骨の短縮,皮下骨腫,低身長,円形顔貌などの身体的特徴の合併が認められる.本症は外因性のPTH負荷に対し,尿中サイクリックAMP(cAMP)排泄増加反応の認められないI型と,尿中cAMP排泄増加反応は保たれているものの,リン酸排泄増加反応を欠如するII型の2型に大別される.すなわち,本症I型はPTH受容体〜adenylate cyclase系に異常が存在すると考えられるのに対し,II型はcAMP産生以降の障害に基づくものと考えられている.本邦では,厚生省ホルモン受容機構異常調査研究班のアンケート調査により,200例以上の本症I型患者が確認されている.I型患者の性比は約1:2で女性に多く,特発性副甲状腺機能低下症の性比がほぼ1:1であるのと対照的である.これに対しII型患者はまれであり,また従来II型と報告されている症例の中にも,その診断に問題の残されている例が少なくない.したがって本症II型患者の診断は十分慎重に行う必要がある.
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