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I型糖尿病とはいかなる糖尿病(病型)か
糖尿病の存在は紀元前から知られていたが,医学の進歩に伴って糖尿病に対する知識が増すにつれ,その遺伝的背景,発症前の病態生理,発症年齢,推定される成因,発症経過,発症後の代謝異常の程度,治療に対する反応性,合併症の発症と進展,予後など極めて複雑多彩な疾患であることが順次判明した.そのため,古くからそれぞれの特徴に注目し,あるいはさらにその時代の医学知識を理論的裏づけとして種々の病型分類が試みられた.すなわち,やせ型・肥満型,インスリン欠乏型・拮抗型,若年発症・成人発症,若年型・成人型などは肥満,インスリン感受性,発症年齢などに注目した分類であり,Hugh-Jones(1955)は主としてケトージス傾向の有無を重視してI型・II型に区別した.また島性・島外性,一次性(遺伝性)・二次性の分類は原因論的立場からであったが,いずれも不完全なもので大方の賛同を得るに至らなかった.
最近十数年間における糖尿病の成因や長期にわたる疫学的・臨床的研究によって,糖尿病は不均一な疾患であることが従来にも増して強く示唆する多くの知見が集積されてきた.これらの知見を踏まえ,NIH(National Institute of Health)のNational Diabetes Data Groupは,糖尿病の原因,治療,合併症の発生,予防を含む臨床研究を計画し管理するための国際的な標準的基準として役だつことをねらって,表1のような病型分類を提案した1).この提案はその後,WHOや日本糖尿病学会の委員会でも現在のところ妥当なものとして承認された2).分類された病型はそれぞれ次のような特徴をもつ.なお表2は,I型およびII型糖尿病について明らかにされてきた特徴を臨床像,遺伝,環境と病理・病態生理に分けて簡単にまとめたものである.
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