増刊号 診断基準とその使い方
I.循環器
16.Reentrant Arrhythmia
小川 聡
1
1慶応義塾大学医学部・中央臨床検査部
pp.1720-1721
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221871
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正常の洞調律により興奮している心臓では,洞結節から発したimpulseは心房から心室へと順次伝播された後に消滅する.心室まで達して心臓全体を興奮させたimpulseが消滅せずにどこかに残存し,不応期の終了後に心臓を再興奮させる現象がリエントリーである.心臓の有効不応期は長く,心房筋での150msecから心室プルキンエ線維での500msecまで幅があるが,少なくともこの間はimpulseは周囲の組織から機能的に隔離された伝導路の中へ迂回することにより生き残らなくてはならない(①伝導路の機能的縦解離によるリエントリー路の形成).機能的縦解離は解剖学的に分離しうる伝導路(例:正常の房室伝導路と副伝導路)においてのみならず,同一組織においても不応期の不均一性を有する場合に生じうる(例:心房,房室結節,プルキンエ線維-心室筋接合部,心室筋).この際,伝導速度が0.02m/secと著明に低下する心筋梗塞心では,わずか6mmの距離を迂回すれば300msecの不応期を有する心筋を再興奮させることができる(②遅い伝導速度).一方,再興奮される心筋の不応期が短縮すると伝導速度の低下が少ない,短い伝導路においても再興奮が生じやすくなる(③不応期の短縮).
臨床的不整脈の大部分がリエントリーに起因すると考えられており,その診断基準はこれらの基本条件の成立を証明することではあるが,すべての不整脈で可能とは限らない.
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