増刊号 診断基準とその使い方
I.循環器
5.拡張型心筋症・アルコール性心筋症
小出 直
1
1関東中央病院・循環器内科
pp.1686-1687
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221862
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■疾患概念と疫学
拡張型心筋症は特発性心筋症の一病型である.特発性心筋症は原因または関連の不明な心筋の疾患と定義される.これを言い換えれば,高血圧,冠状動脈疾患,その他のためでなく,原発性に心筋自体に発生した疾患であって,かつ特定の病因を同定・推定できないもの,ということになる.したがって,診断基準は表1のごとく他疾患を除外することによる.特発性心筋症はさらに肥大型・拡張型の2型に分類され,左室心筋の異常な肥大とそれに伴う左室拡張期コンプライアンス低下を特徴とする肥大型に対して,拡張型心筋症は心筋収縮不全とこれに伴う諸所見,ことに左室拡張と駆出分画の低下を特徴とする.このような疾患概念・診断基準から明らかなごとく,その内容は必ずしも単一疾患ではなく,発症時点では診断できない種々の心筋疾患の末期例を含む可能性がある.
正確な発生頻度は不明であるが,1980年以降の本邦剖検輯報では,全剖検例中0.3%弱が拡張型心筋症と診断されている.ただし,病型の明記されていない特発性心筋症がほかにかなりあり,実数は0.3%を上回ると思われる.
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