講座 図解病態のしくみ 循環器疾患・5
徐拍性不整脈
山口 巖
1
1筑波大学臨床医学系・内科
pp.1252-1263
発行日 1988年7月10日
Published Date 1988/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221766
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不整脈の発生機序は電気生理学的見地から,1)刺激生成異常と,2)興奮伝導障害に大別される.本項で述べる徐拍性不整脈は興奮伝導障害に起因して発生するものであり,後者にはさらに,①伝導遅延と,②杜絶(ブロック)がある(表).
洞結節から発生した刺激は,心房,房室結節,His-Purkinje系を伝導して心室筋に達する.これらの心臓特殊刺激伝導系各部における刺激伝導速度は一様ではない.この不均一性は他項で述べる頻拍性不整脈の発生にも深く関連するが,徐拍性不整脈に関しては,洞結節と房室結節の活動電位の特徴から刺激伝導速度の遅延が理解される.刺激伝導速度を規定する最も主要な因子は,活動電位の立ち上がり速度と振幅である1).これらの値は膜電位が深いほど大きく,浅くなるほど減少する.洞結節や房室結節の膜電位は約-60mVと浅く,活動電位の立ち上がり速度は小さい.一方,Purkinje細胞では膜電位が約90mVと深く,活動電位の立ち上がり速度は大きいので,伝導速度も大である(図1).洞結節や房室結節の活動電位は主として緩徐な内向き電流によって構成され(slow response),上述のごとく伝導速度を低下させる結果,それを強調する他の要因が加わることによって伝導障害が生じる.
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