講座 患者行動のマネジメント・1
臨床一般におけるコンプライアンス問題
今中 雄一
1,2
1東京大学医学研究科
2ミシガン大学PhD課程(行動科学専攻)
pp.926-932
発行日 1988年5月10日
Published Date 1988/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221688
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□患者コンプライアンスの意義
臨床の場で,正確で信頼性の高い情報を得,有用な診断テストを選択し,その結果を解釈し,現実的な予後を見通し治療計画をたて,実際にその治療を行うことが,臨床医学実践のための基礎科学1)(臨床疫学,臨床決断分析など)の応用により,ますます向上する.この一連の科学的臨床実践の段階で,患者が医療者の処方を守らない(あるいは守れない)場合には,そこに至るまでの痛々しい努力と綿密な計画は水泡に帰してしまう.ここで,患者コンプライアンスへの行動科学的アプローチが重きをなしてくる.患者の協力を得る,すなわちコンプライアンスを高めるということが,健康の維持・回復といった医療目的の達成に不可欠であることは言うまでもない.
ここでいう「患者コンプライアンスcompli-ance」,あるいは単に「コンプライアンス」とは,「患者の行動が,服薬,食餌,生活様式変容といった点で医療者により臨床的になされた処方とどれだけ一致しているかの程度2),あるいは一致している状態」を意味する.
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