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はじめに
呼吸器病学に興味をもっている臨床家にとっては,コンプライアンスという言葉はそう耳新しい,疎縁なものではない。その意味するところを具体的に言えば,1例として胸腔内圧を−5cm水柱にした時肺の容積がどれほどふえるかということを示すもので,この場合の圧の変化をΔpとし肺容積のふえをΔvとすれば, C=Δv/Δpで表わされ,その単位はl/cmH2Oである。この値は肺実質に広汎に線維化が起ったような拘束性肺疾患,あるいは僧帽弁狭窄症および左心不全という肺内血量の増加をみる症例に低下することが知られている。すなわちΔv/Δpの低下した状態では,一定の換気を維持するためにはより大きなtranspulmonary pressureを発生させねばならないことを意味し,換気の効率の低下,換気に要する仕事の増大があることを示唆することは臨床的にも理解されている。しかし血管コンプライアンスの問題は肺のそれに比べ,臨床的,病理学的現象としてとらえ難く,圧・流量・血管抵抗という概念には親しい臨床家にとっても,一見全く生理学的な,臨床には無縁な概念のように思われる。ちなみに循環の生理をあつかっている有名な参考書で,巻末のindexの部にvascular com—plianceの項を発見できるのは松田編,生理学大系Ⅲの循環の生理学およびGuytonのTextbook of Medical Physiologyのみであって,米国生理学会編Handbook of Physiology, Best/TaylorのThe Physiological Basis of Medical Practice, SodmanのPathological Physiology, FultonのA Textbook of Physiology,さらにまたBurtonのPhysiology and Biophysics of the Circulationとうには見出しえない。
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