今月の主題 肝炎への新しいアプローチ
肝炎の診断
病理組織像から
太田 康幸
1
,
金岡 光雄
1
1愛媛大学医学部・第3内科
pp.792-796
発行日 1988年5月10日
Published Date 1988/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221660
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肝炎の病理組織学的診断は,1939年,RoholmとIversenによって導入された肝針生検法に負うところが多い.針生検による診断は,Vim-Silverman針,Menghini針などを用いる.穿刺針の直径(0.8mm〜1.8mm)や深さ(10mm〜25mm)によって,採取される肝組織片の大きさが異なるが,肝表面に比較的近い所から得られる組織片を用いて診断される.これは肝臓全体のおよそ5万分の1に過ぎないために,sampling errorの可能性が大きいことは否定できない.しかし,本稿で扱うウイルス性,薬物性,アルコール性,自己免疫性肝炎は,肝硬変と違って,いずれもび漫性に肝小葉を障害するために,2〜3の肝小葉を見るだけで確信をもって診断ができる(Scheuer,1980).現実に,Thaler, H. の名著Leberkrankheiten(1982)1)には,ウイルス肝炎,急性肝炎後の状態についての肝生検による診断率はそれぞれ98%,99%となっており,診断が不能であったものは,それぞれ2%,1%と記載されている.
本稿では成因を異にする肝炎の診断に際して肝生検組織から得られる所見,相互の鑑別について述べる.
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