増刊号 これだけは知っておきたい薬の使い方
Ⅴ 消化器疾患治療薬
消化器悪性腫瘍
137.抗癌剤の使い方
近田 千尋
1
1国立がんセンター病院・内科
pp.2086-2089
発行日 1987年9月30日
Published Date 1987/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221257
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化学療法の現況
日常の癌臨床において,消化器癌が取り扱われる機会ははなはだ多い.その進行癌は,内科において癌化学療法の主対象になっている.今日までほとんどすべての抗癌剤が単独にあるいは併用して試用され,奏効率が向上し,奏効期間,生存期間が延長されている.しかしながら,癌治療の成果が相対的に不十分な領域であると考えられる.癌化学療法の効果向上に寄与する腫瘍,宿主,薬剤の要因がいくつか相関して負であることによると考えられる.
すなわち,腫瘍の負の要因としては,腫瘍量が多く,治療の標的となる転移巣が肝,肺,骨,脳などの複数の実質臓器に存在すること,腫瘍細胞の抗癌剤に対する感受性の低いことなどがあり,宿主の負の要因としては,再発癌として早期に診断されることが少ないこと,転移による臓器の器質的あるいは機能的変化あるいは全身状態(PS)の変化がみられること,中高年齢層の多いことなどがあり,薬剤の負の要因としては,単独抗癌剤の奏効率の低いこと,併用療法による相乗効果が流動的であること,薬剤耐性の打破が不確実であること,副作用に対する是正が順当に行われないことなどがあり,諸要因が重なり合っていることによって,消化器癌の化学療法がなお漸進的な進歩にとどまっていると考えられる.
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