増刊号 これだけは知っておきたい薬の使い方
Ⅳ 循環器疾患治療薬
心筋疾患
113.拡張型心筋症の薬物治療
佐藤 廣
1
1東京大学医学部・第2内科
pp.2026-2027
発行日 1987年9月30日
Published Date 1987/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221233
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拡張型心筋症は,心拡大と心不全を伴う症候群である.主に左室収縮機能が障害され,左室は拡張終期容積,収縮終期容積ともに増加している.また,左室muscle stiffnessは増大しているが,左室chamberstiffnessはむしろ低下している.したがって,低い左室充満圧にて拡張終期容積が十分に大きくなり,Frank-Starling機序が働き,1回拍出量および心拍出量は保たれている.したがって,代償期には,心機能が低下していても,心不全症状が軽微である.しかし,拡張型心筋症ではafterload mismatchが生じており,運動,過剰の水分摂取,血圧の上昇などをきっかけにして,前負荷予備能の限界を越え,左室収縮力がさらに低下して心拍出量が低下し,また左室充満圧が上昇して肺うっ血が生じる.
拡張型心筋症は現在その原因が解明されておらず,特別な治療法は未だ確立されていない.拡張型心筋症で問題になるのは,心不全,不整脈および左室壁運動低下に伴う左室壁在血栓である.ここでは,心不全に対する治療を中心に解説し,最後に壁在血栓に対する治療にふれる.
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