増刊号 これだけは知っておきたい薬の使い方
Ⅱ 神経・筋疾患治療薬
パーキンソン病
46.L-dopaの使い方とその問題点
印東 利勝
1
1名古屋大学医学部・神経内科
pp.1858-1861
発行日 1987年9月30日
Published Date 1987/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221166
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パーキンソン病は,中脳黒質緻密層のメラニン含有神経細胞の変性のため,線条体へ至る黒質線条体ニューロンが脱落する疾患である.黒質線条体ニューロンの神経伝達物質はdopamineであり,この欠乏のため線条体での他の神経伝達物質との間で平衡関係が失われる結果,パーキンソン病の種々の症状が発現する.最近では他のmonoamineもパーキンソン病の症状発現に関与することが少しずつ判明してきたが,依然として黒質線条体ニューロンの変性により生じるdopamine欠乏こそが,パーキンソン病の主要な神経生化学的異常であることには変わりがない.
ところで本症の治療のためには,線条体dopamineの欠乏を補うことが最も望ましいのであるが,dopamineは単独では血液脳関門を通過しないので,通過することのできる前駆物質L-dopaが用いられている.脳内へ入ったL-dopaは,線条体に存在するdopadecarboxylase(黒質線条体ニューロン末端,線条体内のinterneuronなどに存在)の作用でdopamineへ変換されて線条体のdopamine receptorへ作動し,パーキンソン病の症状を軽減させる.これがパーキンソン病でL-dopaが用いられる理由である.
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