増刊号 これだけは知っておきたい薬の使い方
Ⅰ 感染症治療薬
中枢神経感染症
3.結核性髄膜炎における抗結核剤の使い方
萩原 照久
1
,
岡安 大仁
1
1日本大学医学部・第1内科
pp.1752-1753
発行日 1987年9月30日
Published Date 1987/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221123
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- 文献概要
結核症の減少にともない,結核性髄膜炎(本症)の発生率も減少してきているが,総結核症例数に占める本症の割合はけっして少なくなっていない.化学療法が未発達の時代にはすべて致死的であったものが,薬剤の開発に伴い,漸次改善されてはいるものの,現在でも死亡率は25〜35%とされている1).生存例においても,片麻痺や痙攣などの神経学的後遺症の残ることがあり,この点からも早期の治療開始が望まれる.
本症の発病は緩徐であり,小児ではだるさ,食欲不振,なんとなく調子が悪い,などの不定症状で発症し,成人でも熱感,だるさ,傾眠傾向などで発症することが多く,このような状態が2〜3週間続き,その後,頭重感さらに頭痛を訴えるようになる.また時に38〜39℃台の高熱が持続することがあるが,項部硬直,Kernig徴候,Brudzinski徴候などは軽度であることが多い.このため前駆期には,感冒,気管支炎などと診断されることが多い.したがって,不定症状の持続,原因不明の持続性の高熱,ごくわずかでも髄膜刺激症状の存在が疑わしいなどの場合は,髄液検査を施行し,異常の有無の確認を行わなければ,本症の早期診断は不可能である.
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