今月の主題 甲状腺疾患—up-to-date
トピックス
euthyroid sick syndrome
葛谷 信明
1
1筑波大学臨床医学系・内科
pp.456-457
発行日 1987年3月10日
Published Date 1987/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220856
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euthyroid sick syndromeというあまり聞き慣れない症候群だと感じる読者の方があるかもしれない.本症候群はlow T3 syndromeとも呼ばれ,種々の全身性疾患やカロリー制限,手術後またはある種の薬剤投与を受けている患者に見られ,血中T3濃度の低下を特徴的にきたす病態を指している1).本症候群の血中甲状腺ホルモン濃度の変動は,甲状腺のprimaryな異常によるホルモン分泌異常によるものではなく,末梢臓器における甲状腺ホルモンの代謝が変動することが主な原因である.このような甲状腺ホルモンの代謝の変化は病的状態に対してエネルギー消費を防ぎ,異化を抑えるための適応現象であろうと解釈されている.そして,血中濃度の低下にもかかわらず.末梢組織における甲状腺ホルモン作用は正常に保たれていると考えられているので,euthyroid sick syndromeと名づけられている.本症候群の末梢組織がeuthyroidかどうかについては現在もhotな議論のあるところであるが,本稿ではeuthyroid sick syndromeの病態生理,鑑別診断,治療を中心に解説したい.
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