今月の主題 血流障害と血栓・塞栓症
治療総論
抗血小板療法
柳沢 厚生
1
1杏林大学医学部・第2内科
pp.2046-2047
発行日 1986年12月10日
Published Date 1986/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220635
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ここで述べる抗血小板療法とは血小板のもつ凝集機能,粘着機能,生理活性物質放出反応を薬剤を用い直接・間接的に抑制し,新しい血栓の形成を予防する治療法である.血小板は正常な血管内皮に粘着することはない.しかし,血管壁が傷害され,血小板が内膜下のコラーゲンに接触すると血小板は活性化し,変形をしてこの部位に粘着する.この活性化した血小板はdense granuleからADPを放出,serotonin,Ca++,そしてアラキドン酸代謝産物で強力な血小板凝集作用と血管平滑筋収縮作用を有するトロンボキサンA2を血中に放出する(放出反応release reaction).これらの物質は血流中の血小板を凝集して,初期に粘着した血小板層に急速に血小板plugを形成する.血小板plugは小血管を閉塞,またコラーゲンと組織トロンボプラスチンにより内因性・外因性凝固因子が活性化してフィブリン血栓を形成する.現在用いられている抗血小板療法薬剤は,これら一連の反応過程のうち,トロンボキサンA2の生成を阻害,血小板-血管壁相互反応の抑制,血小板phosphodiesteraseを阻害してcyclicAMPを増加させ,細胞内遊離Ca++を減少させるなどにより,初期過程から血栓形成を阻止しようとするものである.
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