講座 図解病態のしくみ 内分泌代謝疾患・5
尿崩症
石川 三衛
1
,
斉藤 寿一
1
,
葛谷 健
1
1自治医科大学・内分泌代謝科
pp.906-912
発行日 1986年5月10日
Published Date 1986/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220380
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多尿,口渇を主訴とする尿崩症には,中枢性尿崩症と腎性尿崩症がある.中枢性尿崩症は,バゾプレシン(抗利尿ホルモンADH,AVP)が分泌刺激に反応して下垂体後葉から適切に分泌されないため,腎における尿の濃縮が減弱して多尿状態に陥る疾患である.本症は,患者がいつから発症したか話すことができるくらい突然発症することが多い.完全型尿崩症では尿量が1日8〜12lに及ぶことがあり,また不完全型尿崩症でも1日3〜6lになるため,患者は多尿および口渇に悩まされる.ADHは腎集合尿細管に作用してcyclic AMPを介して水の再吸収を亢進させるが,このADHの作用が発現しないため,多尿を引き起こす病態が腎性尿崩症である.本稿では,ADHの生理的分泌調節と尿崩症の病態について解説する.
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