臨時増刊特集 診断基準とその使い方
V.内分泌・代謝疾患
尿崩症
吉田 尚
1
1自治医大・内分泌代謝科
pp.1886-1888
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207542
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概念
尿崩症は下垂体後葉からの抗利尿ホルモン,ADH放出の障害により著しい口渇,多飲,多尿を呈している状態である.典型的な尿崩症においては著しい多尿が特徴的であり,1日3,000ml以上,大部分の症例では1日5,000ml以上となる.このような多尿を呈する疾患は尿崩症以外では腎性尿崩症,多飲症,および高Ca血症あるいは低K血症のごく一部の症例に限られる.慢性腎不全など糸球体濾過量の減少する腎疾患では尿の濃縮力が障害されて多尿状態となっても5,000ml/日以上になることはほとんどない.したがって,実際に尿崩症と慢性腎不全が多尿の鑑別という意味で問題になることは少ないが,念のために腎機能を検査する必要はある.糖尿病も口渇,多飲,多尿を呈するが,尿量が糖尿病のみで5,000ml/日以上になることはまずないといってよい.尿比重あるいは尿糖チェックにより容易に鑑別可能である.
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